寺島文庫

木曜, 3月 28th

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2014年第42号より2013年第32号より

【多摩大学リレー講座 寺島学長講義】

 5月29日(木)、多摩大学・多摩キャンパスにて、7年目を迎えた寺島実郎監修多摩大学リレー講座2014年春学期の第6回講義が行われ、学長の寺島が登壇しました。

【17世紀オランダからの視界―その後の進捗】
 講義冒頭、寺島は「グローバル・ヒストリー」の方法論とその有用性を語りました。グローバル・ヒストリーとは、地域史を世界史へと結びつける視点であり、現在の歴史学の主流となっています。この視点に立つと、時代と国境を超えた相関関係が浮かび上がります。その一例として多摩とロシアとの間にある歴史的経緯を紹介し、地域を掘り下げるとその歴史は世界に繋がっていることを強調することで、グローカリティの真の意味を論じました。

 次に寺島は、17世紀オランダと日本の関係に触れました。江戸期の日本は「オランダ風説書」から世界を認識していたが、多くはオランダ人と通詞のフィルターが介在した断片情報であったことや、オランダ商館長がレザノフ来航時の日露交渉に立ち会い、ロシアを排除しようとしていたなどに触れ、日本史においてオランダが持つ意味を再確認しました。
 江戸期日本と朝鮮・中国との関係も論じました。かつて自国を侵略した豊臣家を滅亡させた徳川家と友好関係を結んだ李氏朝鮮が、徳川家を滅ぼした明治政府には冷淡となり、これが日本の征韓論を招いたこと、国交なき交易・政経分離の関係を維持した中国に関しては、日本が鎖国を通じて精神的に中国から自立したことなど多くの視点が紹介されました。
 いずれも長い時間軸と大きな空間軸から過去の日本の国際関係を捉え、現在に与える意味を問う講義となりました。