寺島文庫

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2014年第39号より2013年第32号より

【寺島実郎出版記念講演会 開催報告】

2014年3月4日(火)、東京・日本工業倶楽部にて『リベラル再生の基軸―脳力のレッスンⅣ』出版記念講演会とレセプションが開催されました。

<講演概要>

 「脳力」(のうりき)とは南方熊楠が使用した言葉で、「物事の本質を考え抜く力」のことである。この言葉に触発されて「脳力のレッスン」の連載を始めたのは、9.11直後の世界を考察するためであった。本著に収められた論稿は、3.11の衝撃を受け、自らの思考を見つめ直す過程から生まれたものである。

 「リベラル」で必要な全体知に挑むには、世界を総体として把握する「グローバル・ヒストリー」の視点が有効である。この視点から、17世紀オランダ論を通じて「近代」の考察を深めている。近代とは、①民主主義の確立、②資本主義の成立、③科学技術の進展、がもたらされる時代である。「リベラル」とは、近代の功罪をともに踏まえながら、近代を否定せず真剣に向き合う態度のことである。
 日本の民主主義は、国民が主体的に獲得したものではなく、十分にその意味を理解しているとは言い難い。国家主義への回帰がみられる現在、デモクラシーの真価が問われている。
 資本主義については、マネーゲーム化している現状のものではなく、実体経済に根差し、勤勉・努力という価値観を大切にして産業基盤の形成に努め、国民の幸福を追求した原点を忘れてはならない。
 「リベラル」という態度で科学技術、特に原子力を考えると、必ずしも反原発ではない。原子力に依存しないエネルギー体系を志向し、世界に向けて脱原発の主張をするためにこそ、原子力の技術を保持する必要がある。
 「リベラル」の概念を再構築するためには、経済分野に関連している人たちが日本の現況に危機感を抱き、協力していく必要がある。

【リベラル再生の基軸―脳力のレッスンⅣ】(岩波書店)