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                                                     2024.08.27掲載

株式会社カネカ・「みねるばの森」基金 特別企画

第2回「こどもの未来応援ツアー」

 

 昨年10月の開催に引き続き、第2回「こどもの未来応援ツアー」を株式会社カネカ様の全面的な協力のもと、本年5月12日(日)に開催いたしました。本ツアーには、池森奨学財団様の奨学生とそのご家族、多摩大学様の学生など計18名にご参加頂きました。
 以下、その主な行程についてご紹介いたします。

カネカ鹿島工場の見学

 早朝7時50分、JR東京駅近接の鍛治屋橋駐車場に集合し、8時頃には貸切バスにて出発。約1時間30分で、鹿島臨海工業地帯に到着しました。

 工場に到着すると、鹿島工場の皆さまに温かく迎えて頂きました。到着後すぐに事前説明を受け、参加者は用意されていた保護メガネとヘルメット、耳栓を着用し、工場内へ。断熱材などに使用される発泡樹脂の製造工場の内部を見て回りました。

 発泡樹脂の原料や、原料から作られた製品に、実際に手で触れることができました。発泡樹脂の製品について多くの方が「思っていたより硬い」との感想を持ち、文字通り「百聞は一見に如かず」を体感する工場見学となりました。

▲鹿島工場の方々による説明

 

カシマスタジアムのバックスヤード見学

 工場見学後は、全員で貸切バスに乗り込み、カシマスタジアムへ。移動の車内では、鹿島工場の方が用意して下さった「しおり」を基に、サッカー見学が初めてでも理解しやすく、楽しくなるような説明を頂きました。

 30分ほどでカシマスタジアムに到着。3グループに分かれて、関係者以外は立ち入ることができない放映室やインタビュールームなどを見て回りました。また、元日本代表選手の名良橋晃さんが出迎えてくださり、応援フラッグへのサインや写真撮影に快くご対応頂きました。名良橋さんによるサッカークイズの時間もあり、三グループそれぞれの優勝者にサイン入りのユニフォームをくださいました。

 スタジアム内を移動中には、あっという間の見学時間とはなりましたが、サービス業の現場を体験しつつ、笑みの絶えない貴重な時間となりました。

▲インタビュールームとご作成頂いた「しおり」

 

鹿島アントラーズの試合観戦

 バックヤード見学の後、用意して下さった昼食を挟んで、サッカー試合を観戦しました。

 参加者は、すぐ目の前で繰り広げられる白熱したサッカーの試合や、試合開始前から繰り広げられていた応援合戦を楽しむことができました。とくに応援合戦は、スタジアムが揺れ動いてしまうような声量の大きさで、圧倒されました。また、参加者によっては、もつ煮込みなどのスタジアムグルメ(通称:スタグル)を注文するなど、サッカースタジアムには試合観戦以外にも多くの楽しみ方があることも伝わってきました。

 試合終了後、鹿島工場の皆さまに見送られながら、鹿島スタジアムを出発。5時過ぎには東京駅近くに無事到着し、解散となりました。

▲白熱した試合

 株式会社カネカ様には、弊基金の理念や趣旨に対して前回に引き続きご理解頂き、本プログラムに対して様々なご尽力を頂きました。改めて深く御礼を申し上げます。


 参加者からは、「工場見学は小学生以来で、とてもわくわくしました」「多くの人が幸せと感じてもらうための努力が素敵でした」「試合を観ていて興奮しました」などの感想が寄せられました。

 普段は見る機会がない工場内部や、スタジアムのバックヤード内部などの見学を通じて、日本を支える製造業やサービス業の現場理解を促進し、スポーツ観戦を通じて未来を担う子どもたちに夢を与えるという本プログラムの目的を、達成できたのではないかと考えております。

 弊基金としては引き続きカネカ様とのご縁を大切にしながら、次代を担う子どもたちのため、本プログラムが次につながるように努力を重ねて参ります。

 

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チャリティー出版記念講演会

5月23日(木)、東京・日本工業倶楽部会館に於いて、寺島の最新刊である『21世紀未来圏 日本再生の構想』(岩波書店)の出版を記念したチャリティー講演会を開催いたしました。当日は約200名の方にご参加をいただき、基金の活動をご支援いただきました。(この記事では、講演の一部をご紹介いたします。)

 講演会開催にあたり

 今回の講演会は、寺島文庫「みねるばの森基金」のチャリティー企画として開催いたしました。本基金は、「貧困の連鎖」、本人の責任に問われない、生まれながらの状況による不条理を、社会科学的アプローチで立ち向かうべく、細川護熙氏(元内閣総理大臣)とともに、2021年に設立したものです。課題認識を共有する方々と共に、子どもの教育支援や子ども食堂支援など様々な取組を行っており、新著にかかる講演に先立ち、その成り立ち、支援の必要性について会場参加者と共有しました。

□歴史のプラットフォームから今を認識する

 最新刊タイトルにもある『21世紀未来圏 日本再生の構想』。この構想の前提となる内外の潮流の基本認識を踏まえるべく、講演では、配布の資料集を参照しながら、歴史認識のプラットフォームを共有しました。
 1868年から1945年の77年間を「明治期」、1945年の敗戦から2022年までの77年間を「戦後期」、2023年から22世紀を迎える前の年の2100年までの77年間を「未来圏」として捉え、それぞれの時代の動き、経過を辿ったとき、今、自分はどのような立ち位置にいるのかが見えてくる、と語ります。

 

□健全な危機感の共有

 21世紀の日本のあるべき姿を構想するために、今日本が置かれている状況を事実として正視する必要性を述べ、歴史のプラットフォームから経済基盤の観点で推移と現状を共有しました。

 世界GDPに占める日本の割合は、明治期を迎えた頃は3%程度だったと推計され、戦前の比重のピークが1940年で約5%、戦後期の1950年では約3%でした。その後の復興・成長を直走った日本は外貨を稼ぐ産業群を育て、1994年には世界GDPの約18%を占めピークを迎え、戦後を生きた日本人は「工業生産力モデル」の優等生として、産業力で外貨を獲得して、敗戦後の経済を復興させ、世界GDP第二位の経済大国を作り上げたということに大きな誇りを持っていたと見ます。
 この頃のアジアとの対比では、日本がまだ世界GDPの15%を占めていた2000年、中国やインド等の日本を除くアジア圏は合計しても7%程度であり、日本の半分にも満たない状況でした。
 しかし、昨年の世界GDPに占める日本の割合は、僅か4%にまで落ち込んでいます。対して日本を除くアジア圏の合計は24%であり、日本の六倍を超えるまでに成長しています。この2000年から2023年までの僅か23年間の変化に思考が追い付いていないことを指摘、この事実の認識から本当の意味での反転攻勢が始まるとし、今置かれている現状から、埋没する日本における健全な危機感を持つことについて言及しました。

□産業基盤の強化

 産業構造を考えるにあたり、豊かさの産業づくりから国民のレジリエンスを高めることへの発想の転換についても述べています。例として経済・産業再生への針路について、日本の技術力を集結し、日本の産業基盤を強くすることができるという点に視界を持っていく必要性を指摘します。DXやイノベーションにも立ち向かわなければならないが、イノベーションよりも大事なのは基盤強化と語ります。そして、日本で国産ワクチンを開発できなかったことや、国産ジェット旅客機MRJプロジェクトが挫折した例を挙げ、 埋没が進む日本を建て直す上で重要なことは個別の要素を組み合わせて完成体を作り出す「総合エンジニアリング力」であることを指摘しました。
 最後に、本書を理論のたたき台にし、改善して自分の考え方、理論としてほしい、と参加者・本書読者へ投げかけ、本講演を締めくくりました。

 


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