寺島文庫

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2012年第16号より

寺島文庫・GIN総研フォーラム(春季)が開催
2012年4月20日(金) 会場:日本工業倶楽部会館 大会堂


 2012年4月20日(金)日本工業倶楽部会館大会堂(東京都千代田区)で2012年春季GIN総研フォーラム「寺島実郎の視座」および「復興構想コンテスト表彰式」が開催されました。講演では、米国勤務から1997年に帰国して今年で15年を迎える寺島がこれまでの発言を振り返り、今日の世界情勢と日本の立ち位置について語りました。

 「この15年間に私が申し上げてきたことは、9.11やリーマンショックなどの金融肥大を経て米国流資本主義が倒壊したこと、『陸の中国』(中国本土)と『海の中国』(香港・台湾・シンガポール)の相互連携の深化による大中華圏の躍動、そして3.11からの日本復興構想です。世界が激動する現代、今後、日本がとるべき進路とは何か、エネルギー問題に集約してお話しします。私は経済産業省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本問題委員会でも発言していますが、米国はスリーマイル島の事故以来、1基の原発も製造してきませんでしたが、原子力ルネッサンスへ踏み込み始めました。ジョージア州とサウスカロライナ州に2基ずつ原子炉を新設し、トリウム原子炉の予算も今年度から計上されています。またシェールガス革命によってエネルギー戦略の主軸をシェールガス、シェールオイルなど、非在来型化石燃料に置きつつあります。米国だけではなく、欧州も中国もシェールガスに注目しており、中国は北米のシェールガス分野に投資し、採掘技術やノウハウ取得に注力しています。
 一方、日本では脱原発が声高に叫ばれていますが、事態はそんな単純なことではありません。まず、日本の原子力政策は1951年以降、米国の軍事(核)と資本戦略に巻き込まれてきたという歴史的事実を認識する必要があります。
現在、米ウェスチングハウスを東芝が買収し、GE社を日立が、また、フランスのアレヴァ社とは三菱重工業が共同開発をしています。つまり、日本は軍事においては米国の傘の下にあり、民生においては米国の原子力産業資本の有力な市場です。日本が世界の原子力産業の中核的立場にある現実において、どこまで『脱原発』を唱えられるのか。私は、核の誘惑を断ち切り、平和利用に徹してきた日本だからこそ、原子力の基盤技術力や人材の育成を維持しながら『核廃絶』を訴えるべきだと思う。技術蓄積を絶やしてしまえば、今後、日本が国際社会で原子力やエネルギーに対して発言する基盤さえ失ってしまいます。それでは真の創生は望めないからです」