2014年第43号より2013年第32号より
【寺島文庫塾 北海道研究会発足】
寺島文庫塾北海道研究会は、北海道出身者やゆかりのある方を主な対象に、寺島文庫塾の新たなクラスターとして、北海道を多角的な視野から考察・議論し、様々な課題解決や活性化に向けて研究や提言を行う場として発足しました。
6月18日(水)には、寺島文庫ビルにて第1回研究会を開催し、北海道出身の方を中心に約30名が参加されました。冒頭、本研究会設立の目的と意義を寺島が語ったのち、株式会社カネカ代表取締役会長の菅原公一氏(北海道沼田町出身)に講義を行っていただきました。
菅原氏からは、2009年にカネカが創立60周年を迎えたことを機に、新たな企業理念と長期経営ビジョン「KANEKA UNITED宣言」を策定し、この中で5つの“絆”(「未来をつなぐ」「世界をつなぐ」「価値をつなぐ」「革新をつなぐ」「人をつなぐ」)を掲げ、「変革」と「成長」の実現を目指していることが紹介されました。そして、「変革」と「成長」を実現するためには、常識や既成概念にとらわれず、本質を突き詰めて考えることが、現代を生きる企業人に課せられた大きな使命である等、貴重なご講義を頂きました。
講義後は文庫Caféみねるばの森で懇親会が催され、貴重な交流の場となりました。今後、北海道研究会は年間4回程度、開催していく予定です。
■北海道新聞(6月19日付・朝刊)で寺島文庫塾北海道研究会開催の様子が紹介されました。
2014年第42号より2013年第32号より
【多摩大学リレー講座 寺島学長講義】
5月29日(木)、多摩大学・多摩キャンパスにて、7年目を迎えた寺島実郎監修多摩大学リレー講座2014年春学期の第6回講義が行われ、学長の寺島が登壇しました。
【17世紀オランダからの視界―その後の進捗】
講義冒頭、寺島は「グローバル・ヒストリー」の方法論とその有用性を語りました。グローバル・ヒストリーとは、地域史を世界史へと結びつける視点であり、現在の歴史学の主流となっています。この視点に立つと、時代と国境を超えた相関関係が浮かび上がります。その一例として多摩とロシアとの間にある歴史的経緯を紹介し、地域を掘り下げるとその歴史は世界に繋がっていることを強調することで、グローカリティの真の意味を論じました。
次に寺島は、17世紀オランダと日本の関係に触れました。江戸期の日本は「オランダ風説書」から世界を認識していたが、多くはオランダ人と通詞のフィルターが介在した断片情報であったことや、オランダ商館長がレザノフ来航時の日露交渉に立ち会い、ロシアを排除しようとしていたなどに触れ、日本史においてオランダが持つ意味を再確認しました。
江戸期日本と朝鮮・中国との関係も論じました。かつて自国を侵略した豊臣家を滅亡させた徳川家と友好関係を結んだ李氏朝鮮が、徳川家を滅ぼした明治政府には冷淡となり、これが日本の征韓論を招いたこと、国交なき交易・政経分離の関係を維持した中国に関しては、日本が鎖国を通じて精神的に中国から自立したことなど多くの視点が紹介されました。
いずれも長い時間軸と大きな空間軸から過去の日本の国際関係を捉え、現在に与える意味を問う講義となりました。
2014年第41号より2013年第32号より
【ワークプレイスメント(有給型就業体験)関連情報】
~東洋カーマックス株式会社の事例~ (寄稿)ナジック学生情報センターグループ
「トータルカーマネジメント」を核として車に関わる様々なビジネスを展開する東洋カーマックス株式会社は、人材採用の多様化を図るため2013年度から「ワークプレイスメント」を導入しています。2年目となる2014年度の目標は、事業についての新しい発想を学生と一緒に探求する場を創ることで、同社の魅力を高めることを目指しています。「新しいことはガソリンスタンドの周りでできる」との見地により、スタンドは単に給油の場ではなく「新しい空間創りの場」として、学生には会社の魅力に触れてもらい、会社にとっては若い社員の新しい発想を引き出す場にしていくため「ワークプレイスメント」の活用を考えています。
社内の活性化のためには、若手社員の考えや発想を上司が受け止めることが必要ですが、上司と部下との関係では若手社員が自分の考えを主張するのは難しいものです。このような事態を解消するため、学生とのやり取りの中で、若手社員が自然に自分の意見や発想を出す環境作りもワークプレイスメントのねらいのひとつとなっています。
2014年度は自社にあった学生の採用に繋げるだけでなく、若い社員の活性化を目的としてワークプレイスメントの活用を考えています。
※ナジック・アイ・サポートが取り組むワークプレイスメント
(https://www.nasic-is.co.jp/isupport/isuppo/careerSupport/temporaryWorker.html)
東洋カーマックス株式会社:1963年に設立され、給油・洗車などの車両サービスステーション事業やパーキング事業などを中心に展開しています。
2014年第40号より2013年第32号より
【北海道 成長戦略フォーラム 開催報告】
2014年3月31日(月)、札幌市内にて、北海道商工会議所連合会、札幌商工会議所及び札幌市の主催により、「成長戦略フォーラム〜これからの北海道成長への視座」が開催され、寺島が「世界潮流と北海道の活性化」をテーマに基調講演を行いました。
<講演概要>
国土のグランドデザインから北海道を捉える前提に、北海道の人口は、2050年には現在の550万人から200万人以上も減少し、老年人口割合が25%程度から約51%に達する見込みがあることを踏まえる必要がある。こうした北海道の社会構造の変化を念頭に置き、その上で、戦略的な視座から北海道の将来に、いかに立ち向かっていくのかを考えるべきである。
地域活性化のためには、工業生産力モデルに過剰依存することなく、高付加価値を創出する仕組みづくりが不可欠である。目指すべき姿の参考としては「シンガポールモデル」が挙げられる。同国は、医療ツーリズムや教育産業によって付加価値を創出するほか、LCC(格安航空会社)専用ターミナルの設置やユニバーサルスタジオ、カジノや世界最大の水族館などにより統合型リゾート(IR)を構成している。様々な知恵が政策として実現した成果である。
北海道活性化に向けたキーワードは「移動」と「交流」である。また、観光を産業として成功させ、高付加価値化を図るためのひとつの方策として、ハイエンドのリピーターを惹きつけるための装置が不可欠である。地域にふさわしい統合型リゾート(IR)を構想していくために、地域ごとの知恵を凝縮していくべきである。
2014年第39号より2013年第32号より
【寺島実郎出版記念講演会 開催報告】
2014年3月4日(火)、東京・日本工業倶楽部にて『リベラル再生の基軸―脳力のレッスンⅣ』出版記念講演会とレセプションが開催されました。
<講演概要>
「脳力」(のうりき)とは南方熊楠が使用した言葉で、「物事の本質を考え抜く力」のことである。この言葉に触発されて「脳力のレッスン」の連載を始めたのは、9.11直後の世界を考察するためであった。本著に収められた論稿は、3.11の衝撃を受け、自らの思考を見つめ直す過程から生まれたものである。
「リベラル」で必要な全体知に挑むには、世界を総体として把握する「グローバル・ヒストリー」の視点が有効である。この視点から、17世紀オランダ論を通じて「近代」の考察を深めている。近代とは、①民主主義の確立、②資本主義の成立、③科学技術の進展、がもたらされる時代である。「リベラル」とは、近代の功罪をともに踏まえながら、近代を否定せず真剣に向き合う態度のことである。
日本の民主主義は、国民が主体的に獲得したものではなく、十分にその意味を理解しているとは言い難い。国家主義への回帰がみられる現在、デモクラシーの真価が問われている。
資本主義については、マネーゲーム化している現状のものではなく、実体経済に根差し、勤勉・努力という価値観を大切にして産業基盤の形成に努め、国民の幸福を追求した原点を忘れてはならない。
「リベラル」という態度で科学技術、特に原子力を考えると、必ずしも反原発ではない。原子力に依存しないエネルギー体系を志向し、世界に向けて脱原発の主張をするためにこそ、原子力の技術を保持する必要がある。
「リベラル」の概念を再構築するためには、経済分野に関連している人たちが日本の現況に危機感を抱き、協力していく必要がある。